御蔵

べた凪。油を垂らしたような凪。
それでも潮位、潮回りでは大型船舶が停泊出来ない、貧弱な桟橋と港しか持たない島。
特に波が高く無い日でも『条件付き』*1の就航になるのはこの辺に起因している。


知っている人が御蔵に持っているイメージは、イルカ、巨木、オオミズナギドリといったところだろうか?


三宅、御蔵の間の海域は、黒潮の通り道に当たる。
豊かな海の代表だ。
良い漁場として知られ、無数の鳥山を見ることが出来る。
この豊かな海は『根付きのイルカ』の存在を許している。
人の住む島に根付いたイルカが存在するのは非常に珍しいことらしい。
島からイルカの泳ぐ姿を見、島の傍でイルカと泳ぐことの出来る世界でも希有なスポットだ。


また、手つかずの森が息づく。
幹の周囲が5mを超える巨木が乱立する巨木の森は見る者を圧倒する。
森の神気が肺腑を満たす。


それらは多くの愛好家にとって渡航することの難しさと引き替えにしても得難いものらしい。


とはいえ、集落の至る所に干されたウェットスーツが並ぶ様子が今の御蔵を良く表しているのかもしれない。


二律背反する命題を突き詰めていく前途遼遠たる道の行き着く先に幸いあれ。

*1:海の状況によっては停泊が不能になる場合がある