媚薬 図子慧著

媚薬 (角川ホラー文庫)
結構読ませます。
3つのストーリーが交差、収斂していく様は見事。
ただ、それぞれの視点を隔てるのが『*』だけなのはちょっと寂しい気もする。
けれど、別の視点に移ったときに「これは誰の視点なのか」と戸惑うことしきりの作品が多いなかで、この作品はどの視点に移動したのかが比較的分かり易く仕上がっておりそういう意味では非常に読みやすかった。
それぞれの視点での一人称キャラクターも魅力があり、かなり感情移入が容易にできるかと。
高校生だけちょっと薄いかな。


終わり方は好みの分かれるところかも。
事件終息後の後日談を羅列し、それぞれがどのように収まったのかを記述する様子が言い訳じみていて個人的にはあまり好きではなかった。
その一方で謎は謎として残されていて、実はそっちの方が気になっていたりするし。
あと、おそらく物語の前後で設定に齟齬があったりとかするのではないかと。
日本人の体質には合わないとかなんとか。
収穫がどーたらこーたら。


気になる一文

恐怖とは詰まるところ、他者による自分の肉体の侵略であり、異物との同化なのだから。

『恐れ』の意味にまで言及しているのってあまり目にしません。
作者の恐れ解釈、つまり怖がらせようとする方法論なのでしょうね。