一瞬の光 白石一文 著

一瞬の光 (角川文庫)
白石一文初読。
同筆者の処女作らしい。


人物の設定やエピソード群に力がある。
また、「愛」とは何かといった根源的な問題に、果敢に挑戦している様もすばらしい。
その手法に関しても、敢えて相反する回答者を据えることで、鬩ぎ合いを成していて読み手を引き込むし、言語表現を一つ一つとっても「名台詞」が多い。


(以下ネタバレ)
しかし、全体的なプロットは薄いし、敢えて言うなら先が読める展開かも。
最後の最後には、ヒロインが植物状態になってしまって、それを献身的に看病するという分かり易い「愛」の形に逃げてしまい、其れまでの議論はどこに行ったのかと暫し唖然。
さらに、主人公がその状態が二人にとって一番幸せなどという、自己陶酔に近い自己弁護に落ち着いてしまうところが落ち着かない。
一言で言うと、竜頭蛇尾かも。


また、女性の仕事に対するスタンスなどを見ていてもかなり古風な感じ…
今時こーいう古風なこと言ってたら、女性受けはしないだろうな〜。
ま、主人公にエリートを据えたところでその辺は見え見えと言えなくもないだろうけれども。