ウォーレスの人魚 岩井俊二 著

ウォーレスの人魚 (角川文庫)
岩井俊二初読。


ぶっちゃけあんまし良い文章じゃないですね。
まず、一人称視点がありません。
手法としてそーいうのもアリですが…
神の視点ってのかな?第三者の視点でずっと語り続けるってのは、楽なのは分かりますが、「小説」という形態をとる時にはどうなんでしょう?
微妙です。
あと、名前付けのセンスも微妙かと。


これってジャンルは、何になるのかな?
SFじゃないし…オカルト?
サイエンティフィック・オカルトとでも言うのかな?
よく分からない。
ま、後半どんどんオカルトになった感じかな?


(以下ネタバレ…かも)
一昔前に、人間を動物として捉えてその特徴を他の動物と比較するという学問が出てきて、そのほかの霊長類と人間を比べるということが成されてきて、手の形状の違いや、体毛なんかについて議論が成され、「水棲霊長類」説ってのが出てきたと思うのだけれど、そのあとその説ってのがどうなったか全然知らない…
どうなったのかな?


まぁ。
本作について言えば、その水棲霊長類説に触発されたのは良いけれど、形態的にどうやって餌を獲得していたかってのは謎だったわけだから、それに対してエコロケーションやスタンって答えを用意したのは良いとしても、まぁ、細かいこと言わないけど、無理っぽいわけ。
人間はそーいう構造を持ってないわけで。
で、文中だと細かい手法とかは暈かしまくっててけっこ興醒め。
出版された年代とかの前後関係を調べてないけど、下調べが足りない感じ。
ま、雰囲気で読めって事なんだろうけれど。

アカデミックな世界の空気を長く吸いすぎた人間は権威に対して悲しいほど従順なものである。自分の中のNOも権威の前ではYESになってしまう。YESと言うたびに自分のアイデンティティを修正して生きている。

そう?
逆じゃない?
おまけにそいつを後半の連中の行動の動機付けとして使うなんて、薄いし弱すぎる。
ぶっちゃけ無理では。


なんか、心象風景の描写なんかも薄いし、強引な展開が多い。
そのくせ、肝の部分は簡単に予想がついたりして…