奪取〈下〉 真保裕一 著

奪取(下) (講談社文庫)
下巻も読ませました。
テンポが絶妙です。


ただ上巻で、第三章への切り替わりに大きな期待を抱いていた為に
ちょっと物足りない感じ。


第三章の刷りはじめからは、平たい感じで物語の停滞感が強く漂ったが、これは他が凄すぎたからか。
まぁ、第三章では期限区切りに緊迫感の無い手法を用いたから致し方無いか。
どうやって期限を区切ってくるのかを楽しみにしていて、それを時事ネタでやってのけたところには舌を巻いたけれども…


また、同章の詰めの部分での波乱もなんか取って付けたよう。

それに最後の展開も、そのキャラクターの登場当時から予想していた展開だっただけにげんなり。
物語のスタイルとして、分かり易い悪=「ヤクザ&銀行」への復讐の実現を軸として勧善懲悪を具現化するというスタイルを取っていたのに、最後の最後に裏切り者が利を得るというのはどうか?
そのスタイルの是非は兎も角としても、それをわらって赦すのがかなり無理がある気がする。
そういうことをしそうなキャラクターとして描いていたことは事実だけれども。


確かにそういう展開でもなければ、犯罪が成功してしまいこの手の物語では終わらせにくいというのも分かる。
作者としては是が非でも犯罪が成功しての大団円だけは避けたかったのだろう。
とはいえ、そういうことを踏まえても後日談は頂けないかも。


まぁそれでも、本書のエンタテイメントとしての輝きは色褪せない。
これほど楽しませる(女性に好まれるか否かは別問題として)小説は少ないのだ。