邪魔 奥田英朗 著

邪魔(上) (講談社文庫) 邪魔(下) (講談社文庫)
凄まじい筆力。
「最悪」でも思ったけれど、酷いときの心理描写の臨場感がすごい。
とはいえ、一人称視点が幾つもあるし、不条理さ、やるせなさみたいなものが少なかったので、義憤みたいな感情もわいてこずある意味安心してというか、安閑と読めた感じ。


後半になって題名の「邪魔」がキーワードになってくる感じだけど、そんなに共通感はない。
それにしてもプロットは立ててないのか…(解説より)
そのわりにはよくまとまっていると思う。


(以下ネタバレ)
メインテーマは「狂気」かも。
ボタンの掛け違えから次第に壊れていく女と、壊れていた事実を突然突きつけられる男の話。(突きつけられたのは読者だけど)
もう一つの視点はおまけみたいなもんで、正直影が薄い。
けれど、最後の最後で女がでる行動の心理面での説明が薄くて、妙に突飛な感じ。
終わりの方が暈かされているから、実は大団円感があるんだけど、一番割喰ってるのは、犯罪者の子供達だと思われるので、その大団円感がかなり妙。


ま、エンタテインメント作品としては秀作かと。