ガタカ

ガタカ [DVD]
素晴らしい。
鑑賞直後に、リスタートしてもう一度見ようと思ったのは久しぶりかもしれない。


題材は10年前の作品とは思えないほど、現代社会と合致するところが多い。
現代の、現在の問題について、過去から警鐘を鳴らしている風情とでも言うのだろうか。
まぁ、根本を形成しているのが、極めてキリスト教的なものであるから、時代にはあまり関係がないのかもしれないけれど。


旧約聖書の「コヘレトの言葉」7章13節。
神の御業を見よ。神が曲げたものを、誰が直しえようか。
は、人間の限界を知るという意味で使われることが多いみたいだけど、それは逆に、人間の領分を知れという神の侵すべからざる領域が確固としてあるということを明示してるんだろう。
末端の学究が生命の神秘に触れるとき、けっこう「造物主たる神」という名の思考停止に陥りがちなんだけど、それと同じ思考の動きなんだよね。きっと。
それを無知と呼ぶのは、きっと短視なんだろうけど、って、話がずれた。


取り敢えず、障害だとかハンデだとかいうネガポジのある一元的なものの見方じゃなくて、それは全て多様性であり、多様性があるからこそ素晴らしいんだというテーマが良いのかも。


劇中のジェロームとビンセントの立ち位置は、普遍的な人間の苦悩を、暗喩的に対比しており、象徴的。



(以下別にどーでも良い考察)
近未来が舞台の作品なのでどーもSFとして捉えられがちな今作ですが、こいつはどー考えてもSFじゃありません。
てか端的に言うと、SFとしてはかなりデキが悪いです。
近未来なのでSFでなくてはならないという道理もないわけですが、近未来を描くならSFでなければならないという考えもあるのかなと思って、SF的な見方から今作を色々突っ込んで見ることにします。
ま、一般的なScience FictionのSFじゃなくて、「すこし・ふしぎ」のSFと捉えれば特に突っ込む必要も無くなるんですけども。
とりあえず、今作の主題はSFであるかないかというところにはないと思うので、色々書きますが「どーでも良い」としてます。



1.いくら何でもロケット飛びすぎ
取り敢えず、推進力である噴射剤として今の様な燃料が使われていないという事なら良いですが、ロケット燃料がオゾン層破壊の大きな原因の一つと考えられているので、15分とかに1発ロケットが打ち上げられるような時代になってるんなら、自然環境の事も考えて、軌道エレベーターとか実用化されててもおかしくないかな〜。
あと、反重力とか重力遮断とかの重力制御系の機序もアリだな〜とはおもいますが、ロケットがロケットエンジン(っぽい噴射を伴う装置)で発射されなくなってると最後の最後のシーンの対比はあり得なくなっちゃうんで、どーしようもないのかもしんないですけど。


2.個体識別の手法が変すぎ
今作では、個人を識別する方法として、血液と尿、それに口腔内細胞とか毛とかフケみたいな微量な細胞が使われてますけど、細胞とか血液は兎も角、尿って個体識別の材料って含まれてます?
よく分からないけど、健康診断のイメージを膨らませ過ぎちゃったのかな。
それに、血液にしたって針を刺して指先から採取する方法が一般的みたいなんだけど、きっとそれって指紋照合に遺伝子解析を足したイメージなんだろうけど、機械に吸わせるための仕掛けがちゃちすぎ。
指先から血が流れるシーンがあったけど、そもそも毎回そんなキズつくんなきゃ検査できないんじゃ、キズが治る暇がないし、検出感度が高くなってるならわざわざ血液に達するまで針を刺さなくても、表皮で済むことだよね。
この装置を騙すために、指紋を模した指模型の中に入れ替わる人の血液を入れておくんだけど、いくらなんでも普通凝固しちゃうだろうし、凝固しないように何か添加してるなら、それこそその物質が検出されてバレバレだ。
あと、証拠調べのためにキーボードやら窓の桟やらを掃除機で吸いまくって、迂闊にも落とした眉毛で色々問題が発生する訳だけど、このときに微生物とかのコンタミは考えなくて良いと言うことなのかな?
逆に口腔内の細胞の採取は、不純物、つまりキスの痕跡が出るから困るみたいな言い方してるわけで、いあ、そういう不純物が検出されたという事実がまずいという意味なら良いんだけど、掃除機でガンガン吸っても何もコンタミしない検出精度があるというのに、口腔内細胞のコンタミは問題になるというのも不思議な話。


それと、尿については「立派な持ち物だ」とか「いつも自由自在に尿が出て」みたいな台詞があるから、「出している」ところを見られてるっぽいんだけど、どうやって、出せているんだろう?
全然分からない。


ついでに、身長をごまかすためにあんな大がかりで、しかもバランスの悪くなりそうなことしてる訳だけど、目の手術痕すらわかるというのに、あんな大がかりなのがばれないのが不思議。


3.町作りとか家の造りとか車とかに難がある
古くさくてバランスが取れてない感じ。
特に車とか家とか。
屋内の螺旋階段って必要?
そもそも歩けない人のいる家としては不適当*1だし、そーいう不便な作りってあるのかねぇ?


取り敢えず、こんなところ。
なんか、並べ立ててみるとけっこ穴があるなぁ。
まだまだあるのかもしれんけど、何度も言うようにこの話の主題はSFであることには無いので、それでもいいと思うんだけどね。

*1:まぁ、既に住んでいて後から来たという設定もアリなんだけれど