転生 貫井徳郎 著

転生 (幻冬舎文庫)
貫井徳郎初読。
けっこ面白いです。
後半急激に盛り上がる感じ。
けど、妙に先が読めすぎる部分や、伏線が「伏」線として機能してない部分が多い。
つまり、見え見えの展開なのに、その部分をくどくど回りくどく説明する展開が長く続いていく様には倦むかも。


(以下ネタバレ)
本書では前半で、ドナーが誰かという謎を追い続ける訳だけれども、当初の夢の描写の一人称視点が明確すぎて、主人公の誤認にかなりの無理がある。
一応、引用文献での体験談などを織り交ぜるとそういう解釈も可能かもしれないが、固有名詞や会話内容があれほどの写実性を有し、その固有名詞を思い出して使うまでしているというのに、一人称視点だけぼやけていて、一人称視点を誤認する様にはかなり無理がある。
しかも、その一人称視点の誤認を正すためだけに、本書の3/4程度の頁数を費やしているわけで、見え見えなだけに飽き飽きする。
そもそもこの部分の誤認が無いと本書の構成それ自体が崩壊してしまうわけだから、夢の描写にはもう少し工夫が必要だったと思う。
あと、黒幕の情報の出し方にしてもあまりにあからさま過ぎて辟易する。
全体としては良いと思うのだけれど、あまりに致命的な瑕が幾つかあって、かなり勿体ない感じかも。